音訳(オンヤク)のこと

私はボランティアで音訳をしています。

音訳とは視覚障害者の『目の代わり』となって書いてある事を声を出して読む事です。

読み物はさまざまで文学はもちろん雑誌、新聞、広報紙、取扱説明書、試験問題、参考書、漫画、写真集など広範囲に及びます。


声をだして読むという事に朗読というものもあります。朗読は朗読者によって解釈の仕方や表現方法の違いなど読み方に個性がでます。これとは別で音訳とは、音訳者は一歩退いた位置に立ち何が書いてあるのか正しい情報だけを伝えるのが音訳者です。聞き手の自由な解釈を邪魔しないよう、音訳者の過剰な解釈は控えて読みます。朗読と音訳がまるで違うものだと言うことがご理解できたでしょうか?


私が実際に音訳者となって活動できるまでに、約二年間の講習がありました。


呼吸、発声、発音、アクセントなどの音声化技術や間、スピード、高低などの表現技術、その他処理技術や調査技術、さらにパソコンでの録音技術や編集、校正技術と講習は多岐にわたって行われました。


50代になってこれほど難しい事を覚えるというのは本当に大変でした。一緒に講習を受けた仲間が8人いますが、それぞれ仕事を持ち家庭があり子供もいて親の介護をしている方もいます。その忙しい時間の合間を縫って音訳の講習を二年間も受け、全員が音訳者となる事ができました。ボランティアとは到底思えないボランティアの域を遥かに越えているハードな講習会でした。もちろんみんな途中何度も挫折しそうになりましたが、愚痴をこぼしあい励ましあって何とか無事に終える事ができたのです。


まだまだひよっ子の音訳者で先輩方から支えてもらいながら、この4月から音訳デビューしました。

私が席を置いているのは、県立点字図書館の音訳友の会というところです。そこでは、新聞と広報紙と鍼灸師の専門書の『医道の日本』という月刊誌を読んでいます。その月刊誌は約170ページ前後の本で20人程度の音訳者で分けて読んでいます。私は医道の日本を4月から、ほんの数ページづつを読んでいますが本当に難しく先輩に何度も直して頂きながらやっと仕上がります。まだまだ一人前にはなれませんが、毎月その医道にかける時間がいろんな意味で自分が成長しているように思えます。


表だった仕事ではありませんが私が読んでいるほんの数ページを毎月聞いてくださる視覚障害者の方がいて、毎月その月刊誌を待っていてくださるのだと思うと、私も少なからず社会貢献できているのだと嬉しく思っています。これがボランティアということで、自分ちょっとカッコイイかも(*^ー゚)