私が腹を立てた日

Kさんは元理容師で90代の女性です。

私がもっとも緊張する同業者の大先輩です。Kさんとはいつも世間話に花が咲きます。そして最後はよーく鏡を見て必ず仕上がりを誉めて下さいます。先日は珍しく愚痴をこぼしていたのです。あなたなら話しても大丈夫でしょうからと、、私もここにもう6年いるけど本当にいろんな人がいるのよ。よかれと思ってした事や言った事で、怒鳴られたりケンカの様になってしまったりしてね、私は心臓がドキドキしてお部屋に帰って収まるまで静かにしてたの、それで反省したのよ、余計な事はいっさい言わない事にしょうって。ここでは、余計な事や自慢話はしちゃいけないのよね。つくづく反省したの。本当にいろんな人がいるし、受け止め方も様々だからね、と。Kさんは施設の中では話せない愚痴を私に話てくださったのです。私は同調して頷きながら話を聞いていました。まもなくKさんのカットが終わろうかという頃、職員さんと一緒にWさんが次のカットの順番のため部屋に入ってきまいした。Wさんは気難しい方なのでと職員さんに前々から言われていましたが、私は何度かカットさせて頂いていますが、Wさんは私が不快な思いをする様な態度をとる事はこれまで一度もありませんでした。しかし、その日のWさんは違っていたのです。部屋に入ってくるなり、おー寒い!!と開口一番大声で怒鳴ったのです。その場に数人の利用者さんと職員さんがいましたが、一瞬でその場の空気が凍りつくような感じでした。鏡ごしにKさんも私の顔を見て目配せして、仕上がりを待たずにもう大丈夫よ、と言わんばかりの表情でした。私の心もざわつきましたが、Kさんの仕事はきちんと終わらせなくてはと思い、真後ろにいるWさんの怒っている表情を背中に感じながら、仕事を終えました。Kさんは私に挨拶もそうそうにその場を立ち去ろうと、Wさんにお先ね、つぎどうぞ。といったのですが、Wさんは、うるさいよ!と一言Kさんを怒鳴ったのです。Kさんは私の顔を見て肩をすぼめ怯えた様子でその場を立ち去りました。私はスイマセンありがとうございました、と、申し訳ない気持ちでKさんに挨拶をしました。

そしてWさんの番です。私はWさんがおしてきた手押し車を座っているWさんに近づけながら、こちらの椅子にどうぞ、とお声かけしました。すると、いらないよ!とその車を押し飛ばしてカット椅子まで歩いてきたのです。私は押さえていた気持ちとKさんの分まで腹が立ってきたのです。そしてWさんの首にカットクロスを巻くと、おー冷たいね!とまた怒鳴ったのです。私は、これをつけておかないと髪の毛が入りますので、と低い声の中に怒りを込めて言いました。そしてどれくらい切りましょうか?というと、Wさんは、私はわかんないから、と。どれくらいか言って頂かないと私も切れません、とはいったものの、これ以上お互いにイライラしても嫌な気持ちになるだけなので、私が後ろは襟足ギリギリでスッキリしてよろしいでしょうか?耳の辺りはあまり短いと寒いので半分くらいにしますか?というと、Wさんは耳にかかると気持ち悪いから耳は全部だしてちょうだい、といいました。私は注文を受けると黙ってもくもくとカットして最後に鏡を見せると、はいいいよ、お世話さん。とWさん。最後にはいつものWさんに戻っていました。んー、、虫の居所が悪かったのか、Wさんを呼んでくるのに職員さんのお声かけの仕方に問題があったのか、周囲の方までWさんに振り回されてなんとも嫌な思いをさせられました。特にKさんには、いろんな人がいるのよねー、という愚痴を聞いていたまさにその時だったので、本当にお気の毒でした。次回Kさんにお会いできるのは二ヶ月後です。メンタル大丈夫かなー、心配です(*_*)